かわいい古代 ルリスタンの発掘品

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 「かわいい古代」の続きです。昨日と同じように古代の発掘品の中から、「かわいい」にプラスして現代っぽい「ポップカルチャー」的なものを選んでみた。条件が、かわいいだけなら、それなりにあるのですが、二つの条件になると、あまり多くはないんですね。

 上の写真、妙に能天気でヘンテコな感じ。イランのルリスタン青銅器の山羊や馬と一緒に入手したもので、同じ時代、地域の発掘品だと思っています。

 見た目、表面は錆びた青銅のようですが、案外、軽く、ひっくり返して内部をよく見ると、材質はガラスでした。陶磁器ではない。作られた当時としては、かなりの技術だったはずです。

 

 ルリスタン青銅器について端折って引用しときます。

1920年代末から、イラン南西部のルリスタン地方で出土した特殊な青銅器をいう。住民の盗掘によって市場に出現したものがほとんどで、学術的な調査を経たものはない。・・・その動物意匠から騎馬民族のものであると考えられる。・・・青銅器の大部分は紀元前8~前7世紀にかけてのものと推定される」(小学館日本大百科全書(ニッポニカ)』)。

 

 地図を見るとルリスタンは、イランの西部、イラクとの国境に近いザクロス山脈あたりです。・・・横道に逸れますが、書いていてザクロス山脈のイラク側の山の中を延々、移動していたことを想い出しました。

 三日月型や台形と奇怪な形をした山々、断崖絶壁、硫黄のような異臭ガスのたちこめる谷、草木の生えていない土漠、政府軍の支配地区、地雷原や不発弾の合間・鉄条網の塹壕をぬってひたすら南に進む。山脈がバグダットに近ずくところに目的地がありました。

 そこは、四方が険しい岩山に囲まれた自然の要害。いたる所に泉が湧いていて、大きなイチジクの木や野生のブドウが生えているオアシスでした。

 見渡す限り岩の広大な空間の中で野営し寝起きしていると、聴覚の感覚が変わっているのに気づいたし、遠近感の錯覚で、10キロ、20キロ先の岩がすぐ近くにあるように見えたりと不思議な場所でした。

 このとき人生でいちばんたくさんイチジクを食べた。木は幹も枝も太く横に伸びているので、梯子のように登りやすく、いくらでも捥いで採れました。日本のイチジクよりも大振りで甘くクリーミー、泉で冷やし食べた味が忘れられない。

 そういえば、ここのイチジクは葉も大きかった。このあたりはメソポタミア文明のあったところで、創世記のアダムとイブのいた場所も近くだったと言われています。イチジクの葉っぱで体を隠すというのも、あれぐらいの大きさでないと用をなさないのですね。  

 クルドの人々は純情な人が多かった。また、人情の厚さには、本当に驚きました。

  このままずっとここにいたらいいんじゃないかとよく言われた。でも、浦島太郎みたいな話になりそうでやめました。

 無政府状態でお金はいらないし、そこにいたときのことを想い出すと、国家、国境、行政機関、法律、貨幣・・・そういうもののない天地に人がいるだけという感覚が蘇ってくる。

 あそこを解放区とか、アジールとか、客観的な呼び方はいろいろあるかと思いますが、自分は主観的な呼び方で、青天井というのがぴったりくる。

 いくらお金をかけてもそこにいけないけど、そこにいくのも、そこにいるのもお金のかからない場所、青天井って、そういうところだった。

 ザクロス山脈一帯は、イラク側、イラン側ともに山岳民族といわれていたクルド人の人たちが住んでいる土地で、地元では事実上、国境はなく、自由に行き来してました。 金髪、青い目の子供たちがいたり、また、モンゴロイド系の日本人みたいな顔つきの人もいて、いろいろな人種が混じり合っている。

 クルド人の中には、かってルリスタン青銅器を作った人たちの末裔(の一部)もいるはずです。

 

 話を戻します。ある古美術収集家の方のブログを見ていたら、イランのテヘランにある国立博物館に上の写真と同じようなものが展示されてるのを知りました。

 両者ともに、顔だけ人間のような造形です。とはいえ、ぴったり同じというわけではなく、博物館にある方は、真面目というか玄妙な顔つきをしてますが、こちらは口を開けてヘラヘラ笑ってる能天気な顔つき。

 顔だけ人間ということでは、妖怪のつるべ落としとか、たんたん坊、大かむろなんかもそうでした。そういう妖怪は、水木しげるさんの絵のイメージが刷り込まれていて、モンゴロイド系の顔つきをしている。

 一方、こちらの方は、ルリスタンにいた人々の顔つきがそうだったのだと思いますが、鼻が尖ったように高く、そして小鼻の幅が狭い。

 また、目が大きくて、というか大きすぎてマンガ的、目がグルグル回ってるように見えてしまう。そんなところがポップカルチャー的だなと思ったポイントでした。

 

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