女竹と姫竹の食べ比べ

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 いつもの若林公園の外れ、ちようど松陰神社の入り口辺りの植込みは、この時期、口紅色(?)をしたヒナゲシが満開。その周りから細いタケノコみたいなのが芽を出していた。たくさん出ていて、もしかして食べれるかもと、採ってきた。根元から簡単に折れる。

 

 ふつうタケノコと言ってる孟宗竹のシーズンはもう終わっている。この近くでも4月下旬になると、経堂と宮の坂の中間にある農家が竹藪から採ってきたタケノコを小屋で売っている。毎年、待ちわびていて、今年も何回か食べた。アク抜きに手間がかかりましたが。

 採ってきたタケノコ(?)をネットで調べると女竹(篠竹)という種類らしい。茎が細めで材質が柔らかく、粘りが強いので、よく竹細工に用いられる竹で分類上は笹になる。下の写真は採ってきた女竹。

 

 朝、採ってきたのを夕方、皮を剥いて塩茹でにし、パスタの具材にして食べてみた。アク、エグミはないけど、苦味がありました。ニガヨモギの強烈な苦さに比べれば、たいしたことはない。でも食材としては少し抵抗があるかな。

 調べていくと、採ってすぐに食べると苦味はそれほどないことを知り、翌朝、また採ってきた。今度は昼前に、それでも3時間ほど経ってたが、塩茹でして醤油をつけて食べる。 

 確かに苦味は薄く感じる。そう、トレビスの苦味を思い出した。トレビスはソフトボールほどのサイズで、赤紫の筋が目につく一見、レタスといった感じのイタリア原産の野菜。フランス料理でよくサラダにして食べるのですが、ちょっと苦味がある。女竹の苦味はトレビスと同じぐらい。

 最近の野菜は、野菜の味がしなくなっている。トマトなんかがそう、以前はあった味、風味、癖、匂いが薄くなっている。その分、口当たりはよくなった。そういう野菜に慣れた味覚にとって、トレビスの苦味はどう感じられるか気になる。

 ネットで検索すると、南房総種子島では女竹を郷土料理として食べているとか。千葉、房州の伝統工芸品、房州うちわは女竹を割いて作ることもあり、食材にもしてるようです。

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 味は、よく口にしているタケノコとは違い、こちらは笹の新芽、山菜ですね、上の方は柔らかくて茹でたアスパラガスのよう。植物の香りのグリーンノートっぽい風味。行きがかり上の贔屓目もありますが、苦味も野趣の味わいがあって悪くない。

 ふと、気づいたのですが、桜沢如一氏神の土産物とか、その土地の産土(うぶすな)の贈り物と言っていた食物の味はこれなのかも・・・なんか新発見をしたような気持ちになる。

 蕗(ふき)は苦味があってこそいいんで、それは野菜にはない山菜の味覚でもあります。それを美味しいと感じられるかどうかは、口にする側の頭の切り替え次第だと思うのですが。

 女竹の場合、誰もが知っているタケノコの味が先入観としてあって、それを基準に女竹を口にすると、苦味が違和感に感じられるのではないか。

 

 食べ方としては、採ってすぐ、皮のついたままレンジで焼いて、ほんのり焼けたら皮を剥き醤油を垂らして食べる。蒸し焼きですね。これが一番シンプルで、最も持ち味を生かした食べ方だと思いました。

 

 そういえば、1960年代の高度成長の時代ぐらいまでは、竹の皮でおにぎりを包んでいた。街の商店では、よく肉や魚、コロッケ、ノリ巻き、和菓子など、木を薄く削った「きようぎ(経木)」で包んでいた。かさばるものは新聞紙で包んでいた。

 それらを買い物カゴに入れて持って帰っていた。ビニールのレジ袋はなかった。レジ袋が一般化したのは、スーパーやコンビニが台頭してきてからのことだった。そのころから、生活の豊かさとか、便利さとか、その手の言葉が出回りはじめた。

 

 それから何日か後、三ノ輪の商店街の八百屋さんに、あの女竹によく似たタケノコ(?)が並んでいた。

 通りがかりに偶然、目に入ってきたのですが、後から思うに、これも捨て目でした。女竹を採ってきては試食してた余韻が頭の中を占めてたのだと思う。

 えっ、これ女竹?と店のおじさんに聞くと、「山形の姫竹だよ、ほら、おばあちゃんが山に採りに行って熊に襲われる、あれ」とのこと。アク抜きは必要なく、皮付きのまま焼いて、それから皮を剥いて食べると美味しいという。

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 見た目も大きさも女竹に似ている。根曲り竹とも呼ばれていて、こちらも分類上は笹です。上の写真が八百屋さんで買った姫竹。

 俄然、食べ比べしなきゃという気持ちになって、持って帰り、軽く焼き皮を剥いて食べる。

  姫竹は女竹よりも苦味がない。味、風味、食感など女竹とよく似ているというか、ほとんど同じ。生っぽい緑(植物の新芽)の風味も同じようにある。先に女竹を食べているので、姫竹は円満、癖のない味に感じられた。

 

 5月の中旬、世の中は新型コロナのため自粛中でクサクサしてましたが、ひとしきり女竹と姫竹の食べ比べに夢中になっていました。

 

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