鯖(サバ)の変性意識

 鯖の変性意識? 鯖は魚のサバです。変性意識って言葉は、ふだんの日常の意識とは異なるいろいろな意識状態の総称でチャールズ・タートという心理学者の提唱した Altered state of consciousnessの訳語です。

 はて? そう言われても意味不明・・・いえ、単に先日、サバにあたったという話で、ヒスタミンのもたらす変性意識ってことです。

 

 昼、レアに焼いたサバの塩焼き、急な用事ができてテーブルに置きっ放しにしていた。翌日の夜、食べました。別に味に変わりなかった。梅雨のこの時期、なんで冷蔵庫に入れとかなかったか、後から考えると当たり前のことですが、すっかり忘れてました。

 それから一時間ぐらいして、なんか変なんです。少しフラフラする。それでも気のせいかなと、そのまま過ごしていたら、だんだんきつくなってきた。

 平衡感覚がおかしい。立ち上がると、足がふらつき真っ直ぐ立っていられない。めまいがする。冷や汗が出てきて背中がゾクゾクする。

 何が起きてるのかよく分からなかった。というのは、それ以外は心身の状態は特に変わらなかったので。何か気づいていなかった病の発作か、ごく微量で作用する化学物質の微粉末が空気に漂っていて知らないうちに吸い込んでいたのか、あるいは神経ガスのようなものなのか?

 健康サプリメントとかお医者さんの処方箋薬とか薬やアルコールとは全く無縁の生活なので、そういう類の可能性はゼロ。

 よくサバにあたったときに起きる蕁麻疹やアレルギー反応、頭痛、嘔吐、下痢などの症状はなかった。そんな訳で、おかしいと思っていても、その原因が食べた物とは結びつきませんでした。

 サバにあたるということは、結局、サバの中で生成され蓄積されたヒスタミンを体内に取り入れたことによる中毒症状のことです。

 ヒスタミンは人間の体の中でも作られている活性アミンで、神経組織では神経伝達物質として働いている。花粉症の目や鼻のかゆみは、体が過剰にヒスタミンを分泌することにより起きることから、鼻のスプレーや目薬には抗ヒスタミン剤が用いられている。

 後から調べたら、ヒスタミンに対する感受性は個人差が大きいとのことで、蕁麻疹は典型的な症状ですが、このときは、そういう症状が起きないケースだったようです。また、魚屋の商売をしていた人に聞いたら、ああ、冷や汗がどんどん出てくるのはサバだね、と教えてくれました。

 その後も、めまいと冷や汗は続きましたが、それ以外の症状はなく、めまいで横になり、そのまま眠ってしまい、翌朝には平常に戻っていました。

 

 先に、めまいと書きましたが、回転性のめまいではなく、体がフワフワした感じでふらつく浮動性めまいです。だから不快には違いないけど、それで目が回って気持ちが悪くなるということはなく、あたかもトリップしてるような感覚でした。

 自分にとっては、この時の意識はとてもユニークでした。過去に40~50種類のサイコアクティブを体験していて、それぞれ摂取量や摂取方法により生まれる異なる意識状態を覚えている。そのどれとも異なりました。

 ここで言っているのは、心や情感の変化や感覚の変化ではなく意識の変化のことです。

 比喩的に言えば、目に見えない、耳にも聞こえない、温度とか時間の変化、温度の1度の違い、時間の1分の経過を判別できるか、意識的に練習するとだいたいつかめるようになりますが、その要領で異なる変性意識も覚えることができる。

 別の言い方をすると、異なる変性意識に対応したリアリティの違いと言えばいいでしょうか、五感の感覚も変わるのですが、それぞれの感覚を分析的につかむのではなく、統合的に気づくこと。この気づきは、ヴィパッサナー瞑想の技法に共通したところがある。・・・なにぶん意識の世界のことなので、抽象的な話になってしまいました。

 

 ヒスタミンの変性意識は、どのサイコアクティブとも異なったユニークなものでした。体への負担が少なくて、心と思考は普通の日常と変わらず、浮動性のめまいだけがかなり激しい。それを浮遊感と言い換えてもいいかもしれない。

 顰蹙を買うかもしれませんが、心の片隅では他の変性意識と比較して面白いなと観察していました。全く予想もしてなかったことで、唐突に違う世界、異なる次元を垣間見たような感じです。

 でも、また体験したいかというと、次はどうなるか分からないし、蕁麻疹になるかもしれないし、とてもその気にはなれない一期一会のことでした。

 

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