雪男、イエティの古い絵・・・UMA実在の証拠?

f:id:alteredim:20200916124656j:plain

 宝飾品の展示会に行ったときのこと。ずいぶん前のことです。会場はとても広く、ブースもすごい数、とても一店、一店見てる時間はない。そんな訳で目当てのブース以外は通り抜けるのですが、途中、海外の業者さんのブースが並んでいるエリアで何か引っかかるものが目に入った。

 横のブースの隅に場違いなものがある。キラキラしたアクセサリーを入れたガラスケースの上に、古文書のような、薄汚れた絵(?)みたいな厚紙が束になって置いてある。

 引き寄せられるように近づくとチベット密教のタンカだった。絵葉書より少し大きなサイズで、岩絵の具で描かれており鮮明な色彩。煤や裏面の埃やシミの付き具合、紙の劣化状態から古い寺院にあったものに違いない。

 50~60枚ぐらいの束をササッと見てくと、どれもチベット密教の伝統的な様式の図柄で、この場で売っているとのこと。気にいった何枚か抜き出し、さらに残りを見ていく。

 

 束の下の方に、一枚だけ変な動物が描かれているのが混じっていた。草原を二足歩行で歩いている動物の後姿。全身が毛に覆われ、太い尻尾がついている。これ、一体何だろう? 

 正面、あるいは横からならば、見当がつくのに・・・後姿なのは、逃げ去る姿を遠くから目撃したのを拡大して描いたからなのではないか。見た目、なんかトボけたというか、間の抜けた感じ。

 このブースはシンガポールの業者さんで、聞けば、中国の四川省の寺院にあったものだという。寺の場所や名前は分からない。扱っているメインは、宝飾品なのでタンカの束はついでにこんなものもあるんですが、といった感じで端っこに置かれている。場違いなものなので、足を止めるお客さんもいない。

 紙の状態からこの40~50年のものではない。100年以上は経っている。清朝は1644年から1912年まで、大まかに江戸時代と同じぐらいの期間、江戸時代より少し遅れて始まり明治末まで続いている。

 ところで、日清戦争は清の滅亡に大きな影響を与えていたし、文禄・慶長の役は明の滅亡に影響を与えていた。共に、王朝が傾いていたってこともあるのですが、建国71年の中華人民共和国はどうなるんでしょうか。

 紙の状態から清朝後期のもののようです。日本で明治時代のものといえば、そんなに古いってわけでもないですが。清朝は、チベット密教に対して融和的な対応をしていた。また、現在の四川省の西部は、そのころは東チベットと呼ばれていた。

 中国共産党チベットを併合したとき、チベット自治区と分けてチベットの東側を四川省に組み入れた。万が一、併合が頓挫しても、東側は確保しておくって考えてたってことでしょうか。・・・そういえば、現在のモンゴルという国は、昔のモンゴルの北部地域で、南部は中国に併合されて内モンゴル自治区になっているのも同じですね。

 当然、四川省にはチベット密教の寺院がたくさんあったはずで、現代の中国ではそういう寺に収められていた古い文物は、売り払われているようです。 そんな流出物の一つがどんな経緯を経てか、行き着いたのがここだったわけです。でも、ここでは、売ってる人も、お客さんも誰も関心を持っていない・・・。

 こんな経緯で4点ほど持ち帰ってきた。

 

 最初、描かれている動物は、ヒマラヤの雪男、 イエティかと思った。でも、最近はそういう話し、どうも分が悪い。

 近年、イエティの毛、歯、毛皮、排泄物と言われてきた遺物をDNA分析した結果、イエティの正体はヒグマかヒマラヤクマ(ツキノワグマ)だということになってきた。ちょっと夢が萎むような話ですが、まあ、そうなんでしょう。

 しかし、この絵の動物の太い尻尾はどう考えたらいいのか? ヒグマやヒマラヤクマにはこんな尻尾ないですから。

 

 世界のいろんな動物、すでに絶滅した動物も含めて似た動物が存在していないか探してみた。

 いました! メガテリウム、約1万年前ぐらいまで南アメリカに生息していた巨大なナマケモノの近縁族。成獣は全長6~8メートル、体重3トンになったという。一見、クマにも似ているし、太い尻尾が付いている。

 ヒグマは重いもので600キロぐらいとか。3トンというと、アジアゾウに近い。とんでもなく大きい。そうか、オオナマケモノ(和名)なら、なんかトボけたというか、ノロノロしてそうな感じってのももっともかも。

f:id:alteredim:20201215161621p:plain

 上は化石の骨格を基に描かれた想像図。大英博物館には全身の骨格標本があリます。 

 こういう古生物学に基づいて描かれた絵をパレオアートと言っている。想像図が異なっているのは、実物の体毛や色までは分からないので、その辺りは推測で描いているためです。

f:id:alteredim:20201215161812j:plain

 南米コロンビアのアマゾン川流域の岩窟遺跡で発見された壁画。 約1万1800~1万2600年前に描かれたと推定されている。 その壁画の中に絶滅した巨大動物が描かれていたのですが、研究者がオオナマケモノメガテリウム)と認定しているのが上の絵。壁画にはマストドンラクダ、ウマ、正体不明の哺乳類などもある。

 骨格標本から描かれた想像図と似ているでしょうか。確かに顔、口はそんな感じですが、 尻尾は、はしょって描いているのか? 壁画の方がリアルに現物に近く、パレオアートの方がずれているのかもしれないので。

  ナマケモノは異節類という南アメリカで進化した哺乳類のグループで、清朝後期、18~19世紀にヒマラヤで生息していたというのはちょっと苦しいのですが・・・。ということでは、 メガテリウムとは違うまだ知られていない動物(UMA)かも。

 

 古代の発掘品に限らず、近世でもよく分からない動物のテラコッタ、陶磁器、石像など骨董の世界で見かけることがある。神話や伝説をモチーフにしたものばかりでなく、その時代、その地域にいた生き物に違いないというものもある。

 最近、ベトナムなどインドシナのジャングルで新種の哺乳類が発見されてニュースになっている。あの地域の古い陶磁器の発掘品には、象とか牛とか動物のものも多い。顔の部分の破片で、羊、鹿、馬のような、でもどれにも当てはまらない動物のものもある。

 ああいう発掘品の中には、現在は絶滅しているけど、2~3世紀前ぐらいまではいた動物もあるんじゃないでしょうか。

 

     ☆世界の香など揃えたショップ。よかったらご覧下さい。 http://alteredim.com