未来は今・・・臨海副都心とウルトラQ

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 毎年、春、秋の二回、お台場の国際展示場に通っている。もう20年以上になります。

 ここは、通称、東京ビッグサイト、巨大なロボットみたいな建物(会議棟)で知られていますが、大きな展示場がいくつもあって、そこをうろうろしている。とにかく広いので歩くのが大変。

 よほど天気が悪くない限り、昼すぎにはいつも西展示場の屋上で一休みしている。屋上の端に小さな見晴らし台があり、ここでコンビニで買ってきたおにぎりやサンドイッチを食べる。

 この場所は自分にとって隠れ家的スポットで、いちばん景観のいい場所を独り占めしてる気分・・・と言っても、そんなことに関心ある暇人はいないので、いつきても無人なんですが。

 残暑の厳しい炎天下の日もあったし、見上げると台風が接近して低い雲が流れるように動いていたことも、小春日和の凪いだ海を眺めてたり、冬の真っ青な空の下で日なたぼっこをしたりと、いろんな日があった。

 そこから見える景色、眼下に東京湾、遠く房総半島のコンビナート、羽田空港を離着陸する飛行機、巨大な観覧車、大きな玉が載っているテレビ局、ベイブリッジ、鳥居みたいな形をしたホテル、高架で空中を滑っているように見えるゆりかもめと基本的には変わってない。

 それでも、少しずつ変わっているところもありました。通いはじめたころは、夢の島は海からせり上がった白い丘だった。廃棄物の山が白く見えたわけです。ゴミ処理のクレーンも見えた。それがいまは移植した木々が成長して緑の島に変わりつつある。

 夢の島という名前、いつの日か緑の森になることを計画して付けられてたのでしょうか。

 品川の方向は、再開発で以前はなかった高層ビルが林立している。すぐ隣の有明にはオリンピック関連の施設が建っている。

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 1月下旬、快晴の暖かな日、いつもの場所で、いつものように休憩してたら、珍しく人がやってきた。上の写真、隠れ家にしている見晴らし台の屋根です。

 屋上の端っこで、周囲は駐車場になっていることもあり、ひと気がなく、他の人と鉢合わせしたのは本当に久しぶり。この10数年ではじめてのこと。

 催しに出展しているヨーロッパの業者さんのようで、階段をちょっと昇り、視界の開けた場所に立ったとき、ワオーと声を上げた。目の前に広がる景色に、よほど驚いたんでしょうか、思わず声が出ちゃったという感じ。

 冒頭の写真は、その人が声を上げた景色。季節は真冬ですが、太陽が燦々と輝き、海がキラキラ光っている。平日ということもあり、見渡してどこにも人がいない。ゆりかもめが無音で滑るように移動している箱庭的世界。

 そうでした、この天気、冬の海洋性気候もワオーと言わしめる大きな要素になっている。暖かな昼下がり。雲ひとつない真っ青な空、眩しい太陽。遠くに真っ白な富士山も見える。こっちの方がインパクトあったのかも。

 この景色を毎回、見てきて、自分の内に焼き付いている。海と空、それにシュロの木が並んでいる亜熱帯的な天地、薄い水色、ライトブルーの建物や交通機関、視界は整然としてひと気がない。

 生活感が全くないし、車も人の姿も見えない。まるで現実がジオラマ化しているよう。

 無音、無臭、隅々までクリーンで清潔な空間。全てが無国籍的な、人工的でフラットな、どこか空虚な世界、これが日本の21世紀なんだな、 自分の内ではそんなイメージが出来あがっている。

 

 いつからかこの景色、昔のテレビ番組のワンシーンと重なってるように思えてきた。

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 今から約半世紀前、1968年に放映されたウルトラQ、「開けてくれ」というタイトルで、異次元の世界のシーン。海があって、その向こうに奇妙な建築群、空を列車が走っている。この光景は、現在の上海の方が近いだろうか、上海のテレビ塔やタワーの光景は似てるなと思う。

 ゆりかもめは空は飛ばないですが、人の頭上を高架で移動している。電車と違って無人運転で無音、走るというより滑る、移動するといった感じです。

 人間世界の現実は過去と未来を織り込んで作られている。見ているのは日常普通のお台場の景観ですが、半世紀前の異次元(=未来)が今、ここにあるんだなと思っている。結局、昭和の高度成長のころの人々の集合的無意識が物質として形になった、現実化したのを見てるってことですよね。

 20年も見続けてイメージが固まってきた。失われた20年といわれた時代とも重なっていて、だいたいこのあたりまでかなと思っている。明け透けに言ってしまうと、この四半世紀、経済が停滞している中、よくここまでやったなとも思う。

 

 そういえば、1982年に公開された映画、ブレードランナーは37年後、2019年のロサンゼルスを描いていて、その世界はレトロフューチャーといわれる当時としては斬新な未来像だった。

 ・・・と言っても、あの映画は、19世紀の世紀末のアートがそうだったような反近代の頽廃的な雰囲気を再現してるようにも見え、本質的に「斬新」とは言えないのかもしれない。『西欧の没落』(1918)の二番煎じのようにも見える。

 ブレードランナーの未来は、随所、東洋、日本っぽくもあった。当の日本は、ブレードランナー的な荒んだ退廃的世界とは異なり、ウルトラQも現在のお台場も明るくクリーンで、なんか桃太郎的(?)な景色。

 また、超近代的なビルで見る人を人を圧倒させるようなドバイ、ああいうバブル的な世界とも違う。

 お台場の景色は、ブレードランナーやドバイと比べるとチマチマしていて、かと言って決して見劣りするわけでもない特異な世界、空間の広がりはあるのだけどなんだか箱庭を見ているような感じ。

 これがナンバーワンよりもオンリーワンを志向した日本なのかも。別にそれを選択したわけではなく、もともとそうだったので惰性でそうなったオンリーワンですが。だから他の国とは比較できない・・・特異な世界のわけです。

 江戸時代の昔から震災や大火、火山噴火、台風、それに戦災などを繰り返してきたことからすれば、この景色も消え去るときがくるかもしれない。

 でも、それも織り込み済み、口にしなくても誰もが薄々、起こりうることとして意識しているはず。そして、次に再建される日本もやはり桃太郎的で、チマチマした世界になるような予感がしている。

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 これが見晴らし台。 升形の砦みたいな小さなスペースで、石の腰掛が4席。日除け程度の屋根、空を見るにはこれぐらいの方がいい。元来、狭い所が好きってこともあります。

 天地広大な空間の中にポツンと、茶室というかウサギ小屋みたいな所が落ち着く・・・こういう感性、日本的なのかも。

 

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